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救済の隙間で

  • 執筆者の写真: 古川和子
    古川和子
  • 2018年5月16日
  • 読了時間: 3分

先日、久しぶりにHさんから電話がありました。

Hさんは80歳半ば可愛いお婆ちゃんです。

しかし十数年前から在宅酸素を使用しています。

Hさんの肺は「びまん性胸膜肥厚」です。

酸素を24時間使用しているわけではないので、呼吸機能障害の程度は「軽い」とみなされています。

Hさんが肺に異常をきたしたのは、幼少期から過ごしていた地域の石綿鉱山からの飛散と、石綿工場に勤務していた母親による家庭内ばく露が原因だとみられています。

先日Hさんの希望で、私は罹りつけの某市立総合医療センター呼吸器科に同行しました。

突然の「第三者同行」で主治医は厳しい反応を示しました。

Hさんと、お嫁さんが交渉した結果「今日の診察が終わってから」となりました。

待つこと数時間。

「お待たせしてすみません」との医師の言葉で診察室に迎え入れてもらうことが出来ました。

CT画像を見せてもらっての説明があり、前回の診察時に行った呼吸機能検査の結果報告説明がありまあした。

やはり…環境再生保全機構が示している「著しい呼吸機能障害」の数値には達していません。

➝この数値そのものがかなり厳しいものなので、問題があるのですが。

私が診察室に入るとほどなく「この認定基準がおかしいのです」と言った主治医の言葉通りに、「ヨレヨレになっている苦しい患者しか救済しない」制度なのです。

「もし悪性のもの(癌)になれば、話は別ですが、今の状態では」

私はこのような言葉を数えきれないくらい聞いてきました。

悪性の病気でなくても、Hさんは日常生活を制限されています。

もし大きな災害があり一定時間停電が起これば、Hさんは命の危険に晒されます。

それでも「まだ大丈夫」の枠に入れられているのです。

何とも歯がゆい空気が流れた診察室内でした。

そのような中で、「現在の認定基準ではどうしようもありませんが、今後も様子を見守っていきましょう」といってくれた主治医の言葉にかすかな安ど感が生まれました。

Hさんは生まれ育った環境のせいで呼吸器疾患になってしまったことに理不尽さを抱えています。

在宅酸素の機械代を支払う負担よりも「なぜ?」という怒りがHさんの心を占めています。

Hさんの「自分の病気を認めてもらえない悔しさ」は過去に2回も環境再生保全機構に申請したことでも解ります。

歳も歳だからこれで最後…と言いながら前回の申請でしたが、残念な結果に終わりました。

再々度の挑戦を、ともくろみましたが主治医の言葉に断念。

認定基準そのものが悪い。

ずっと言い続けていますが、国は変わりません。

人間の身体は数字で割り切れるものではありません。

まぎれもなく、「環境被害」である方に対する環境省の向き合い方には大きな問題があります。


 
 
 

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